公益社団法人 全日本鍼灸学会 学術研究部 安全性委員会

Update 2018-10-18

鍼灸の安全対策サイト

Safety measures for acupuncture and moxibustion

鍼灸の感染防止対策Q&A

流水と石鹸による手洗い

・手洗いは目に見える汚れ(皮膚通過菌・タンパク汚れ)を除去し、手指消毒薬の殺菌効果を高めるために行います。
・アメリカ疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインでは、手洗いは感染対策の標準予防策(スタンダード・プレコーション)つまり最も重要な対策とされています。

・午前や午後の診療開始前に行いましょう。患者毎に実施することが推奨されますが、目に見える汚れがない場合には、擦式手指消毒で代用しましょう。また、診療終了時にも行いましょう。
・繰り返しの手洗いは手荒れを引き起します。手荒れは細菌の温床つまり感染源となりますので注意が必要です。目に見える汚れがない場合には擦式手指消毒薬で代用しましょう。

・爪と皮膚の間は垢が溜まりやすく不潔で、手洗いではこれらを洗い流すことはできません。
・爪切りを常備し、いつでも爪を切れるようにしておきましょう。

・腕時計は非常に不潔ですので臨床中の使用は避けましょう。ナースウォッチを使用しましょう。
・腕時計のベルト部分は垢が溜まりやすく不潔です。手首を十分に洗うことができませんし、手洗いにより腕時計から汚れが流れ出て手指を汚染します。

・液状あるいは泡状の消毒剤入石けんが推奨されますが、基本的にどのタイプでもよく消毒剤の有無は問いません。
・手洗いの目的は目に見える汚れを洗い流すことです。消毒は速乾性手指消毒薬で行います。

・固形石鹸は水切れが悪く緑膿菌の温床となるため推奨されません。
・一般に石鹸には殺菌効果はありません。

・手洗い時間は30秒以上60秒未満が適当です。
・手指の汚れを落とすには最低30秒間必要です。しかし、60秒以上を目標とすると返って実施率が低下するとの報告があります。
・手洗いの手順図を見ながら手を洗うとよいでしょう。

・手指に傷をつけるので推奨されません。
・ブラシによる手洗いは手荒れを起こし、傷口は細菌の温床となります。また、ブラシ自体が細菌の温床になりますので推奨されません。

・交差感染の恐れがありますので使用は避けましょう。ペーパータオルの使用が推奨されます。
・布タオルは1回毎に交換するなら問題ありませんが、繰り返し使用では細菌が繁殖し交差感染の原因となります。

・ペーパータオルからは細菌は検出されません。また、使い捨てなのでとても衛生的です。
・製造過程で熱が加えられ殺菌されますので、布タオルやエアータオルに比べ衛生的です。

・ペーパータオルは3枚以上使用することが推奨されています。
・手指の水分は手指消毒薬の濃度を低下させますし、汚れや細菌が付着しやすく問題です。水分を十分に拭き取ることが望まれます。

・エアータオルは空気中の細菌や埃を吹きかけるので使用は避けましょう。
・水溜まりのあるタイプでは緑膿菌が繁殖することがあり推奨されません。

・スキンクリームを塗るなど日頃からスキンケアを心がけましょう。ただし、スキンクリームは手洗いや手指消毒の妨げになりますので診療中は避けましょう。
・診療終了後の手洗いの後に行いましょう。

手指消毒

・いいえ速乾性擦式手指消毒薬を使う必要があります。
・手洗いは、皮膚通過菌とタンパク汚れ等を除去する目的で行ないます。一方、速乾性擦式手指消毒薬は、物理的な汚れを除去することはできませんが皮膚常在菌を一時的に殺菌することができます。この二者は目的が異なるため併用することが重要です。

・消毒用スクラブ剤は極力避け、速乾性擦式手指消毒薬を使用することが推奨されます。
・消毒用スクラブ剤の成分は、クロルヘキシジングルコン酸塩(ヒビテン®)なので手指消毒としては十分です。しかし、消毒用スクラブ剤で頻回に手洗いをすることは手荒れの原因となります。
・最近では、手術時の手洗いでも「石鹸手洗い+速乾性擦式手指消毒薬」の組み合わせが用いられています。

・どの製品を使っても問題はなく、性状は施術者の好みで選びましょう。
・液体製品は、床に垂れる量が多くなり十分な薬液量が手指に塗布されない場合があります。ジェル製品は、液垂れが少なく経済的ですが、製品によってはベタつきが気になるものもあります。

・手荒れの防止と持続的な殺菌効果です。
・速乾性擦式手指消毒薬には、手荒れ防止のためにグリセリンなどの湿潤剤が含まれています。また、添加物であるクロルヘキシジングルコン酸塩やベンザルコニウム塩化物は、皮膚に吸着し持続的な殺菌効果が期待できます。

・手荒れを起こしやすいので、繰り返しの手指消毒には推奨されません。
・アルコールは脱脂作用があり容易に手荒れを起こし、傷口は細菌の温床となります。

・ステンレス製の桶に消毒薬を満たし、手指を浸して消毒する方法です。
・患者毎に交換するのであれば問題ありませんが、繰り返しの使用では交差感染の恐れがあり推奨されません。

・交差感染の恐れがあり推奨されません。
・患者毎に交換するのであれば問題ありませんが、繰り返しの使用は避けましょう。

施術野の消毒

・アルコール系消毒薬であれば効果はほとんど同じです。ただし濃度に注意して下さい。
・主なアルコール系消毒薬には以下があります。
1.クロル消毒用エタノール(日局76.9~81.4v/v%)
2.70v/v%イソプロパノール
3.イソプロパノール添加エタノール
4.香料添加消毒用エタノール
 
参考/吉田製薬文献調査チーム. 消毒薬テキスト. 第4版. 吉田製薬. 2012.

・70v/v%イソプロパノールや低水準消毒薬で代用しましょう。
・消毒用エタノールにアレルギーがあってもイソプロパノールは問題ない方もいます。アルコール全般にアレルギーがある場合は以下の低水準消毒薬で代用しましょう。
・低水準消毒薬は細菌汚染を受けやすく取り扱いには注意が必要です。低水準消毒薬には以下があります。
1.クロルヘキシジングルコン酸塩系
 1)マスキン水® 0.1%・0.5%(丸石製薬)
 2)ヘキザック水® 0.1%・0.5%(吉田製薬)
 3)ワンショットプラス® ヘキシジンTM0.2%(白十字)
2.ベンザルコニウム塩化物系
 1)ザルコニン液® 0.05%・0.1%(健栄製薬)
 2)逆性石ケン液® 0.05%・0.1%(吉田製薬)
 
参考/日本病院薬剤師会. 消毒薬の使用指針. 第3版. 薬事日報社. 1999.

・消毒効果が弱いので使用しないで下さい。価格が安く刺激性が低いため使用される場合がありますが医療現場の消毒には不適です。70v/v%イソプロパノールを使用しましょう。

・アルコールでは問題ありませんが、低水準消毒薬は注意が必要です。
・クロルヘキシジングルコン酸塩やベンザルコニウム塩化物などの低水準消毒薬に耐性を示す細菌は存在します。しかし、実用濃度で使用している場合であれば耐性菌の出現はあり得ません。
 
参考/尾家重治. 消毒・滅菌・感染防止のQ&A. 照林社. 2006.

・当日、使い切りが原則です。作り置きや補充は禁止です。残った場合は廃棄しましょう。
・アルコール綿(消毒綿)の場合、密閉した状態では1週間程度は一定の濃度を維持できます。しかし、蓋の開閉を繰り返す臨床においては、揮発による濃度低下を考慮し、その日のうちに使い切りましょう。
・また、微生物汚染を受け易い低水準消毒薬(クロルヘキシジングルコン酸塩、ベンザルコニウム塩化物)で作製した消毒綿も、その日のうちに使い切りましょう。

・問題はありませんが、いくつか注意事項があります。
・綿花に十分な量の薬液を含浸させることができない場合があります。長期間使用しても容器内のアルコール濃度は殆ど変化しませんが、上部の受け皿から異物の混入することが多々みられますので、内容物がアルコール以外の場合は微生物に汚染される可能性があります。
 
参考/菅原正秋ほか. 定量液吐出容器(ハンドラップ®)の安全性の検討. 東京有明医療大学雑誌. 2011;3:19-21.

・既製品のアルコール綿(消毒綿)は以前に比べ安く購入することができ、万能つぼで作製する場合と価格的に遜色ありません。廃棄ロスを考えると既製品の方がリーズナブルな場合もあります。安全面とコスト面および手間を考えると、既製品を使用することをお奨めします。

・現在、異なる消毒薬や様々な枚数の商品が販売されています。
・消毒薬では、エタノール、イソプロパノール、エタノール+イソプロパノール、クロルヘキシジングルコン酸塩があり、単包装では1枚入、2枚入、4枚入が、パック式では32枚入、50枚入、100枚入、200枚入などの製品があります。

・医療機関では、開封後1日で使い切ることが推奨されます。
・患者数に合わせて単包装か最小限のパック式消毒綿を使用しましょう。
・メーカーによっては使用期限を1週間以内としている場合もありますが、アルコール濃度は使用状況により大きく左右されます。できるだけ早く使い切りましょう。

使用する鍼

・衛生面や耐久性を考えて滅菌済みの単回使用毫鍼を使用すべきです。

・感染防止の観点から滅菌済みの単回使用皮下鍼を使用すべきです。
・また、衛生面の観点から、原則、貼付後24時間以内に取り外すべきです。

・洗浄と消毒あるいは滅菌に耐えうる製品(材質)の使用が望まれます。
・ディスポーザブル製品(使い捨て)があればそれを使用するのが望ましいです。

・ディスポーザブル製品(使い捨て)のものを使用するのが望ましいです。
・洗浄と消毒あるいは滅菌に耐えうる製品(材質)の使用が望まれます。

器具の衛生/滅菌・保管

・衛洗浄を十分に行いましょう。十分に洗浄されていれば、特に消毒の必要性はありません。
・タンパク汚れが付着したままの滅菌済み器具を使用した場合、アレルギーを起こす可能性がありますので、洗浄剤を用いた超音波洗浄や熱水洗浄が推奨されます。

・紫外線保管庫を使用しなくても床から離し閉鎖された場所で湿気を避けて保管できれば問題ありません。ただし、滅菌バッグの使用が前提です。
・床から20~25cm、天井から45cm以上距離をあけ、水濡れや湿気を帯びる場所は避けましょう。扉や蓋のついた保管棚(キャビネット)を使用しましょう。

環境衛生

・金属、プラスチック、塩化ビニル製品の清拭にはアルコール系消毒薬が適しています。
・ただし、芽胞形成菌(クロストリジウムディフィシル、枯草菌など)やノロウイルスに汚染された場所には次亜塩素酸ナトリウム(ハイター®等)を使用するのがよいでしょう。

・手袋を装着し、次亜塩素酸ナトリウム(ハイター®等)をしみ込ませたペーパータオルで清拭して下さい。
・B型肝炎・C型肝炎はアルコールでは完全に死滅しない場合がありますので注意が必要です。

飛沫感染防止策

・飛沫感染の防止策の一つであり、症状のある患者の感染性呼吸器分泌物の発生源の封じ込めを目的とします。インフルエンザなどの飛沫感染による感染症の流行時に実施します。咳エチケットの具体的内容は以下です。
・症状のある人々(患者・施術者)にはクシャミや咳するとき、口および鼻を覆うように指導する。
・口および鼻を覆う場合はティッシュを用い、使用後、手を触れなくて済む容器に廃棄する。
・気道分泌物で手が汚れたあとには手指衛生を徹底する。
・患者が耐えられれば外科用マスクをするか空間的分離(1m以上の距離)を維持する。*通常のマスクも可。
 

・飛沫感染とは病原微生物を含む直径5μmより大きい飛沫粒子で概ね1mの範囲で感染するものをいいます。飛沫感染による疾患には、かぜ症候群(普通感冒)やインフルエンザがあります。
・飛沫粒子は、症状のある患者のクシャミや咳により空気中にまき散らされますが、浮遊し続けることはなく特別の空調や換気は必要ありませんので、通常は咳エチケットで対応します。飛沫粒子は接触感染の原因ともなりますので、その際には手指消毒や清拭消毒が必要となります。

・矢野邦夫 監訳. 隔離予防策のためのCDCガイドライン: 医療現場における感染性微生物の伝播の予防 2007. http://www.maruishi-pharm.co.jp/med/cdc/all02.pdf
・小林寛伊 編. 新版 消毒と滅菌のガイドライン. 第1版. 東京: へるす出版; 2012.

血液感染防止策

・現在は医療関係者に限らず広くワクチン接種することが推奨されています。
・医療機関では、患者や患者の血液・体液に接する可能性のある場合、すべての医療関係者に対してワクチン接種をする必要があります。
・近年、国内ではジェノタイプA(欧米型)の遺伝子型をもつB型肝炎ウィルス感染が増えています。ジェノタイプAの慢性化率は20~30%(ジェノタイプB・Cは10%以下)と言われいます。

・追加接種することを推奨します。
・近年、B型肝炎ウィルス(HBV)既感染者において、免疫抑制剤の使用や生体肝移植後に起こるB型肝炎の再活性化(denovo B型肝炎)が問題になっています。HBs抗体価を維持することで再活性化を防ぐことができます。

・抜鍼時の鍼体には少量とはいえ血液が付着しており、B型肝炎等の血液感染の恐れがあるためです。
・B型肝炎患者に刺鍼した鍼から肝炎ウイルスが検出されたとの報告があります。
・CDCガイドラインにある感染の標準予防策として、患者の血液・体液に極力触れないようにし感染リスクを低減する方策が推奨されています。

・施術者の皮膚に付着した場合は流水と石鹸で十分に洗い流して下さい。
・B型肝炎あるいはC型肝炎はアルコールでは完全に死滅しない場合があります。器具やベットあるいは床などに付着した場合は、手袋を装着し次亜塩素酸ナトリウム(ハイター®等)をしみ込ませたペーパータオルで清拭して下さい。

・直ちに内科を受診して適切な処置を受けて下さい。
・可能であれば患者も一緒に受診し、肝炎などに感染していないか検査してもらうとよいでしょう。

感染性廃棄物

・感染性廃棄物とは「医療関係機関等から生じ、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物」のことです。
・具体的には、血液、体液、排泄物が付着した廃棄物に加え、鋭利なもの(未使用を含む)も感染性廃棄物として扱います。

・「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」において「鍼灸の施術所」は「医療関係施設等」に含まれず、「鍼灸の施術所」から出る廃棄物は、法的には「感染性廃棄物」に含まれません。
・しかしながら、鍼灸師の社会的立場と責任から使用済みの鍼や血液のついた綿花等は「感染性廃棄物」に準じた処理を行うことが推奨されています。施術所の所在地の自治体(保健所等)の指示に従い適切に処理しましょう。

・使用済あるいは未使用の鍼(毫鍼、円皮鍼、皮内鍼など)、血液や体液あるいは排泄物の付着した消毒綿、ペーパータオル、リネン類等が感染性廃棄物に該当します。
・血液や体液あるいは排泄物が付着していないものは非感染性廃棄物として扱います。

・感染性廃棄物は、医療廃棄物容器(感染性廃棄物容器)に入れ、都道府県知事あるいは政令都市長の認可を得た業者に運搬・廃棄処理を委託しましょう。
・感染性廃棄物(特に使用済みの毫鍼)は、鍼刺し事故等を防止するために、移し替えを行わず、直接、専用容器に廃棄することが望まれます。

・毫鍼のような鋭利なものはプラスチック製の医療廃棄物容器に廃棄します。
・プラスチック製の医療廃棄物容器には、0.5L~4Lの卓上の注射針用小型容器から20L~70Lの大型容器まであります。
・ただし、使用する医療廃棄物容器については事前に委託業者に問い合わせて下さい。

・消毒綿やカーゼ等の鋭利でない感染性廃棄物は、プラスチック製あるいは安価な段ボール製の医療廃棄物容器に廃棄することができます。使用する医療廃棄物容器については事前に委託業者に問い合わせて下さい。

・廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年九月二十三日政令第三百号)最終改正:平成二六年三月二六日政令第八〇号
・環境省大臣官房 廃棄物・リサイクル対策部. 廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル. 2012.
・尾家重治 編. ここが知りたい!消毒・滅菌・感染防止のQ&A. 第1版. 東京:照林社;2011.
・尾崎昭弘, 坂本歩, 鍼灸安全性委員会 編. 鍼灸医療安全ガイドライン. 初版. 東京: 医歯薬出版; 2007.