公益社団法人 全日本鍼灸学会 学術研究部 安全性委員会

Update 2018-10-18

鍼灸の安全対策サイト

Safety measures for acupuncture and moxibustion

鍼灸の有害事象Q&A

調査・総説

安全性委員会で行った鍼灸の安全性に関する前向き調査では、総治療回数14,039回のうち有害事象の発生は847(6.03)でした。内訳は頻度が高い順に、皮下出血・血腫370 (2.64)、不快感109 (0.78)、刺鍼部の残存痛94 (0.67)、刺鍼時の痛み78(0.56)、出血74(0.53)、症状の悪化28件(0.20%)、不明26件(0.19%)、火傷24件(0.17%)、その他19件(0.15%)、皮膚炎・皮下組織炎12件(0.09%)、鍼の抜き忘れ13件(0.09%)でした。報告された有害事象のほとんどは軽症で一過性のものであり、気胸や感染症など重篤な有害事象は報告されませんでした。鍼灸医療安全ガイドラインに基づく標準的な鍼治療では重篤な有害事象が発生する可能性は非常に低いことが明らかとなっています。
 
参考
Furuse N, Shinbara H, Uehara A, Sugawara M, Yamazaki T, Hosaka M, Yamashita H. A multicenter prospective survey of adverse events associated with acupuncture and moxibustion in Japan. Medical Acupuncture. 2017. 29(3): 155-162.
・尾崎昭弘,坂本歩.鍼灸安全性委員会(編).鍼灸医療安全ガイドライン.第1版.東京.医歯薬出版.2007

前向き研究とは、新たに生じる事象について将来にわたって追跡調査する研究方法で、事前に調査結果に関わる因子を把握・調整することができることから、過去にさかのぼって調査する研究(後向き研究)よりも信憑性が高いとされています。

2012年から2015年までに発表された鍼灸に関連する有害事象論文は32文献38症例収集されました。内訳は、感染症5件、臓器損傷12件、神経損傷4件、皮膚疾患0件、折鍼・伏鍼・異物3件、灸による事象1件、その他7件です。
過去の報告と比較して、有害事象全体に占める感染、臓器損傷、折鍼・伏鍼・異物の割合は高くなっていました。詳細および過去の研究部安全性委員会による文献の総説(レビュー)については参考文献を参照してください。
 
参考
・古瀬暢達, 上原明仁, 菅原正秋, 山﨑寿也, 新原寿志, 山下仁. 鍼灸安全性関連文献レビュー20122015年. 全日本鍼灸学会雑誌. 2017;67(1):29-47.
・古瀬暢達, 山下仁, 増山祥子, 江川雅人, 楳田高士. 鍼灸安全性関連文献レビュー2007~2011年. 全日鍼灸会誌. 2013;63(2):100-14.
・山下仁, 楳田高士, 形井 秀一, 石崎 直人, 江川 雅人, 箕輪政博, 畠山 博式, 古屋 英治, 半田美香子, 宮本俊和. より安全な鍼灸臨床のためのアイデア(2) 有害事象報告論文(2003-2006)および指サック・グローブ装着に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2008;58(2):179-94.
・山下仁, 江川雅人, 楳田高士, 宮本俊和, 石崎直人, 形井秀一. 国内で発生した鍼灸有害事象に関する文献情報の更新(1998~2002年)及び鍼治療における感染制御に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2004;54(1):55-64.
・1998年以前のデータは分野別に2001年発行雑誌に記載されています。 

鍼による有害事象

・鍼に関連する有害事象は、感染症、臓器損傷(気胸・血管傷害を含む)、神経損傷、皮膚疾患、折鍼(埋没鍼を含む)・伏鍼・異物、に分類されます。詳細は以下の項目をご覧下さい。

感染症

・細菌やウイルスなどの微生物がヒトの体内に侵入して、臓器や組織あるいは細胞の中で分裂増殖し、その結果として惹起される疾病です。
・鍼治療後に感染症を発症した症例が報告されています。因果関係が証明されていないものが多いですが、細菌・ウイルスの感染経路のひとつとして鍼治療が疑われています。鍼治療後に発生したと報告されている感染症は、大きく細菌感染症と血液媒介ウイルス感染症に分類されます。

・膿瘍や関節炎などが報告されています。
・膿瘍とは、組織、臓器に起こった化膿性炎の結果、限局性に好中球を主とした滲出物の蓄積が起こった状態です。肩甲骨周囲、傍脊柱筋、腰部筋、頸髄や腰髄の硬膜外、後腹膜部や腎臓など様々な部位で報告されています。
・関節炎は関節に炎症が起こり、関節の腫脹、疼痛、局所熱感、運動機能障害といった症状が現れるものです。化膿性肩関節炎、化膿性脊椎炎、腰部敗血症性関節炎、腰椎化膿性椎間関節炎などが報告されています。感染症の原因菌はブドウ球菌属やレンサ球菌属などが多いです。

・鍼治療と血液媒介ウイルス感染症の因果関係を証明した症例報告論文はありません。現在、鍼灸師の多くは使い捨ての鍼を使用しており、そもそもウイルスに汚染された鍼が患者と接触する可能性はありません。
・また、鍼を再使用する場合も、国内で標準的な施術とされているCDCガイドラインに基づく鍼の洗浄・滅菌を行っていれば感染の可能性はありません。しかし、家族歴、生活歴、輸血歴がなく、治療歴から感染経路のひとつとして鍼治療を疑う症例報告論文が少数ですが報告されています。
・国内で2000年以降、鍼治療後に発生したB型肝炎の症例報告論文は2文献2症例です。これら2例は、以前の血液検査ではHBs抗原陰性であったものが肝炎を発症しており、発症前に鍼治療を受けていた経緯から鍼治療を感染経路として疑っているものです。どちらも因果関係を詳細に分析した記載はないため、必ずしも鍼治療が原因かは不明です。
・なお、鍼治療後にC型肝炎やエイズを発症したという症例報告論文および明確に因果関係が証明された報告は国内ではありません。

・多くの症例は時間的に感染症発症の前に鍼治療を受けたという事実だけで、因果関係を証明する記載はありません。
・感染経路として、日常生活において患者が接触・経験する様々な事象全てを完全に否定することは困難です。このため、「鍼治療が原因でないと証明すること」および「鍼治療が原因と証明すること」の両方とも難しいといった状況があります。また、B型肝炎は30~150日の、C型肝炎は30~50日の潜伏期を経て発症するため感染ルートの証明がより困難です。このため多くの報告者は因果関係があることを示唆しながらも明言を避け、「鍼治療後に発症し」と記述する傾向があります。
・また、論文著者のほとんどは医師であり、鍼施術の状況や器具設備などの衛生環境について詳細な記載がなく、文献の記載だけでは判断が困難です。
・耳鍼による局所の化膿など、刺鍼した部位と同一箇所に感染症が発生した場合や、同一治療院での多発などの場合は因果関係が強いと推察されますが、鍼治療後に感染症を発症したという事実のみで因果関係を推察するための詳細な記載がない論文も多く存在します。

・安全性委員会で行った安全性に関する前向き調査では、鍼治療後に感染症を発症した症例は報告されませんでした(0症例/総患者治療回数14,039回)。鍼灸医療安全ガイドラインに基づく標準的な鍼治療では感染症を含む重篤な有害事象が発生する可能性は非常に低いことが明らかとなっています。
・現在の日本においては、鍼灸師の養成も大学による高等教育が進み、医療としての学問、技術、倫理、安全性における教育は充実し、鍼の単回使用、手指消毒・院内環境・シャーレなど器具の適切な消毒、滅菌などCDCガイドラインに基づく標準的な衛生操作が教育カリキュラムに含まれています。このため、鍼を感染経路として感染症が発症する可能性はほとんどありませんが、不衛生な鍼治療により感染症が発症した可能性を完全に否定することもできません。
・安全性委員会では、学術大会におけるワークショップの開催、Webサイトの運営、学術雑誌への安全情報の提供、各種業団体での講演など、安全性に関する啓発活動を行い安心で安全な鍼灸医療の構築に努めています。

・鍼灸医療安全ガイドラインに基づく標準的な施術を行えば感染する可能性はありません。
・標準的な施術とは、鍼の単回使用、手指消毒・院内環境・シャーレなど器具の適切な消毒・滅菌などです。これらは、鍼灸師養成機関における教育カリキュラムに含まれています。
・感染の成立には肝炎ウイルス・エイズウイルスが患者の体内に入り増殖することが必要です。そもそも、鍼を単回使用に限定すれば、肝炎やヒト免疫不全ウイルスに汚染された鍼が患者と接触する可能性はありません。
・また、治療時の微小出血による周囲へのウイルス汚染拡散に関してもリネン類の管理・ディスポシーツ・消毒・滅菌・手洗いを適切に行えば2次汚染を防ぐことができます。

2012年から2015年の文献の総説(レビュー)では、細菌感染症5文献6症例収集されました。
・内訳は、頸部化膿性椎体炎と頸部硬膜外膿瘍1例(MSSA)、腰部化膿性脊椎炎と硬膜外膿瘍1例(Gemella morbillorum)、右膝の人工膝関節インプラント感染2例(G群連鎖球菌、大腸菌)、右膿胸と両側肺炎と硬膜外膿瘍と脊椎炎1例(原因菌記載なし)、動脈瘤と潰瘍形成と菌血症1例(MSSA)です。
※カッコ内は原因菌
・全例が保存療法のみでは対応できず、ドレナージ等手術を必要とするものでした。
・感染予防のためにはCDCガイドラインに基づく標準予防策を順守することが大切です。

・CDC: Guideline for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities, 2008.
・尾崎昭弘, 坂本歩, 鍼灸安全性委員会編. 鍼灸医療安全ガイドライン. 初版. 東京: 医歯薬出版; 2007.
・楳田高士, 山下仁, 江川雅人ら. 鍼灸の安全性に関する和文献(6) 鍼治療による感染に関する報告について. 全日鍼灸会誌. 2001;51(1):111-21.
・山下仁, 江川雅人, 楳田高士ら. 国内で発生した鍼灸有害事象に関する文献情報の更新(1998~2002年)及び鍼治療における感染制御に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2004;54(1):55-64.
・山下仁, 楳田高士, 形井 秀一ら. より安全な鍼灸臨床のためのアイデア(2) 有害事象報告論文(2003-2006)および指サック・グローブ装着に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2008;58(2):179-94.
・古瀬暢達, 山下仁, 増山祥子ら. 鍼灸安全性関連文献レビュー2007~2011年. 全日鍼灸会誌. 2013;63(2):100-14.
・古瀬暢達, 上原明仁, 菅原正秋, 山﨑寿也, 新原寿志, 山下仁. 鍼灸安全性関連文献レビュー20122015年. 全日鍼灸会誌. 2017;67(1):29-47.
・古瀬暢達, 内野容子, 山下仁. 鍼治療とB型・C型肝炎感染に関する文献レビュー. 全日鍼灸会誌. 2016;66(3):166-179
Furuse N, Shinbara H, Uehara A, Sugawara M, Yamazaki T, Hosaka M, Yamashita H. A multicenter prospective survey of adverse events associated with acupuncture and moxibustion in Japan. Medical Acupuncture. 2017;29(3):155-162.

 

臓器損傷

・刺鍼や伏鍼が原因となって内臓や血管を損傷したものです。その原因から、刺鍼による損傷、意図しない折鍼による伏鍼が原因となるもの、埋没鍼の3つに分類されます。 
・伏鍼とは、折鍼により体内に残存した鍼のことです。
・埋没鍼とは、故意に折鍼して体内に残存させる施術法のことです。1976年に日本鍼灸師会が当時の厚生省に禁止通達を要望し、鍼灸医療安全ガイドラインにおいても厳禁となっています。

・刺鍼による損傷では、気胸や出血(後腹膜・腎臓など)、血腫(腸腰筋など)、動脈瘤(膝窩動脈など)があります。また、伏鍼が重要臓器(肺・腎臓・尿管・後腹膜腔内・膀胱など)および重要血管(腹部大動脈、肺動脈など)に迷入し各部を損傷した症例が報告されています。
・刺鍼による出血・動脈瘤・血腫が報告されています。局所解剖を理解し、不必要な深刺や粗暴な手技を避けることが重要です。また、伏鍼の重要臓器・重要血管への迷入が報告されています。これらの多くは摘出手術により症状が軽快・治癒しています。伏鍼が発生した場合は、直ちに専門医への受診を勧めるべきです。

2012年から2015年の文献の総説(レビュー)では、気胸が8文献13症例でした。気胸以外の臓器損傷は4文献4症例で、内訳は心タンポナーデ1例、十二指腸壁を貫通した伏鍼1例、卵巣嚢腫茎捻転1例、左外腸骨動脈部伏鍼1例でした。
・血友病患者や動脈硬化が疑われる高齢者など出血傾向がみられる患者への施術は、そのリスクを勘案して施術をする必要があります。
・これら臓器損傷の予防には、重要な臓器・血管・神経の局所解剖及び安全深度を理解し不必要な深刺や粗雑な手技を控えることが大切です。

・鍼治療後に発症したとされる気胸は、安静による経過観察のみで治癒したという軽度の症例も多いです。しかし、両側性気胸、緊張性気胸、血気胸など重篤な事例も報告されており注意が必要です。1980年以降少なくとも両側性気胸7文献、緊張性気胸1文献、血気胸3文献、両側緊張性気胸4文献が報告されています。
・両側気胸は両肺の萎縮により重度の呼吸障害を起こす可能性があります。
・緊張性気胸は肺の穴が一方通行弁となり患側胸腔内圧が異常上昇し、健側肺や心臓脈管系を圧迫するものです。放置すると血圧低下,閉塞性ショックなどの重篤な状態を招きます。血気胸は胸壁と肺との癒着などが切れ出血した状態です。
・いずれも早期に適切な対応をとらないと重篤な症状を引き起こしかねないものです。重篤な例は非常に稀ですが、臨床において気胸の発生が疑われた場合はすぐに病院での精査を勧めるべきです。

・山田伸之, 江川雅人, 楳田高士ら. 全日本鍼灸学会研究部安全性委員会. 鍼灸の安全性に関する和文献(3) 鍼治療による気胸に関する文献. 全日鍼灸会誌. 2000;50(4):705-12.
・山下仁, 形井秀一. 鍼治療と両側性気胸. 全日本鍼灸学会雑誌. 2004;54(2):142-8.
・山下仁, 江川雅人, 楳田高士ら. 国内で発生した鍼灸有害事象に関する文献情報の更新(1998~損傷2002年)及び鍼治療における感染制御に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2004;54(1):55-64.
・山下仁, 楳田高士, 形井秀一ら. より安全な鍼灸臨床のためのアイデア(2) 有害事象報告論文(2003-2006)および指サック・グローブ装着に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2008;58(2):179-94.
・古瀬暢達, 山下仁, 増山祥子ら. 鍼灸安全性関連文献レビュー2007~2011年. 全日鍼灸会誌. 2013;63(2):100-14.
・古瀬暢達, 上原明仁, 菅原正秋, 山﨑寿也, 新原寿志, 山下仁. 鍼灸安全性関連文献レビュー20122015年. 全日鍼灸会誌. 2017;67(1):29-47.
・古瀬暢達, 山下仁. 鍼治療の安全性向上に関する文献的検討 気胸. 医道の日本. 2014;73(9):118-25.
・尾崎昭弘, 坂本歩, 鍼灸安全性委員会編. 鍼灸医療安全ガイドライン. 初版. 東京: 医歯薬出版; 2007.

神経損傷

・神経を損傷し、その支配領域に痛み・しびれ・感覚障害などを起こしたものです。
刺鍼による神経損傷により痛み・しびれ・感覚障害を生じた症例が報告されています。
・(公社)全日本鍼灸学会 学術研究部 安全性委員会では、意図しない折鍼が原因の神経損傷、埋没鍼が原因の神経損傷、刺鍼による神経損傷の3つに分類しています。

・頸部、腰部、下肢、殿部、上肢の伏鍼が原因と思われる神経損傷が報告されています。
・また、刺鍼による損傷では、クモ膜下出血、硬膜部血腫、後頭神経痛などが報告されています。
・特に上部頸椎部での神経損傷例が多く報告されています。同部位への深刺は神経損傷のリスクがあることに注意が必要です。

2012年から2015年の文献の総説(レビュー)では、4文献4症例報告されています。内訳は頸部硬膜外血腫1例、頸椎硬膜下血腫1例、頭蓋内に迷入した伏鍼1例、迷走神経損傷1例でした。
・頸部での深刺が原因による脊髄損傷やクモ膜下出血の事例が報告されています。頸部への深刺は後頭骨環椎間・頸椎椎弓間・椎間孔から鍼が進入し、延髄・脊髄を傷害する危険性があります。この部の安全深度を十分理解し施術することが重要です。
・埋没鍼は、1976年に日本鍼灸師会が当時の厚生省に禁止通達を要望しており、鍼灸医療安全ガイドラインにおいても厳禁となっています。

・江川雅人, 山田伸之, 楳田高士ら. 全日本鍼灸学会研究部安全性委員会. 針灸の安全性に関する和文献(2) 神経傷害に関する報告. 全日鍼灸会誌. 2000;50(4):697-704.
・山下仁, 江川雅人, 楳田高士ら. 国内で発生した鍼灸有害事象に関する文献情報の更新(1998~損傷2002年)及び鍼治療における感染制御に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2004;54(1):55-64.
・山下仁, 楳田高士, 形井 秀一ら. より安全な鍼灸臨床のためのアイデア(2) 有害事象報告論文(2003-2006)および指サック・グローブ装着に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2008;58(2):179-94.
・古瀬暢達, 山下仁, 増山祥子ら. 鍼灸安全性関連文献レビュー2007~2011年. 全日鍼灸会誌. 2013;63(2):100-14.
・古瀬暢達, 上原明仁, 菅原正秋, 山﨑寿也, 新原寿志, 山下仁. 鍼灸安全性関連文献レビュー20122015年. 全日鍼灸会誌. 2017;67(1):29-47.
・古瀬暢達, 山下仁. 鍼治療により生じた神経傷害例の文献レビュー. 医道の日本. 2013;72(6):138-46.
・尾崎昭弘, 坂本歩, 鍼灸安全性委員会編. 鍼灸医療安全ガイドライン. 初版. 東京: 医歯薬出版; 2007.

皮膚疾患

・鍼治療の後に生じた局所性銀皮症・金属アレルギーなどが報告されています。
・局所性銀皮症は銀の沈着によって顔面・頸部・手背などの露出部に特異な色調(灰紫青色)の色素斑を生ずる疾患です。刺鍼部と病変部が一致し、銀を含有する鍼の埋没が原因と思われる症例が報告されています。
・また、金属アレルギーでは、刺鍼部と一致した部位に紅斑や水疱が形成された例が報告されています。

2012年から2015年の文献の総説(レビュー)では、皮膚疾患の有害事象症例報告はありませんでした。
2007年から2011年文献の総説(レビュー)では、20年前の埋没鍼が原因とみられる局所性銀皮症が1文献1症例報告されています。
・局所性銀皮症は銀の沈着によって顔面・頸部・手背などの露出部に特異な色調(灰紫青色)の色素斑を生ずる疾患です。

・金属アレルギーでは、銀鍼に含まれる銀や亜鉛あるいはステンレス鍼に含まれるクロムおよびニッケルが原因ではないかと考察している文献があります。
・局所性銀皮症の多くは銀鍼の埋没が原因であり、埋没鍼を行わないことによりその多くは発生の防止が可能です。
・しかし、鍼治療は身体の内外に直接金属を接触させる治療法であるため、皮膚疾患の既往や金属アレルギーの疑いのある患者への施術には注意が必要です。
・万が一、刺鍼部に一致した皮膚病変を認めたときは、鍼治療を中断して直ちに患者に専門医の受診を勧めるべきです。

・山下仁, 宮本俊和, 楳田高士, 江川雅人, 谷万喜子, 鍋田理恵, 濱田淳, 山田伸之, 形井秀一. 全・日本鍼灸学会安全性委員会. 鍼灸の安全性に関する和文献(9) 皮膚科領域における鍼の有害事象. 全日鍼灸会誌. 2001;51(2):201-6.
・山下仁, 江川雅人, 楳田高士, 宮本俊和, 石崎直人, 形井秀一. 国内で発生した鍼灸有害事象に関する文献情報の更新(1998~損傷2002年)及び鍼治療における感染制御に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2004;54(1):55-64.
・山下仁, 楳田高士, 形井 秀一, 石崎 直人, 江川 雅人, 箕輪政博, 畠山 博式, 古屋 英治, 半田美香子, 宮本俊和. より安全な鍼灸臨床のためのアイデア(2) 有害事象報告論文(2003-2006)および指サック・グローブ装着に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2008;58(2):179-94.
・古瀬暢達, 山下仁, 増山祥子, 江川雅人, 楳田高士. 鍼灸安全性関連文献レビュー2007~2011年. 全日鍼灸会誌. 2013;63(2):100-14.
・古瀬暢達, 上原明仁, 菅原正秋, 山﨑寿也, 新原寿志, 山下仁. 鍼灸安全性関連文献レビュー20122015年. 全日鍼灸会誌. 2017;67(1):29-47.

 

折鍼・伏鍼・異物

・伏鍼とは折鍼により体内に残存した鍼のことです。異物とは体内に存在する「正常な細胞」ではないもの、つまり、伏鍼や伏鍼を核として形成された結石などのことです。
・鍼灸臨床に関する有害事象においては、伏鍼と異物はほぼ同じものを意味します。医学論文では、体内に残存しているものが何か不明な場合や伏鍼を核として結石の形成などある場合に異物という記載がみられます。
(公社)全日本鍼灸学会 学術研究部 安全性委員会の有害事象の分類では、伏鍼による感染症は「感染症」に、伏鍼による臓器損傷は「臓器損傷」に、伏鍼による神経損傷は「神経損傷」に、伏鍼による皮膚疾患は「皮膚疾患」に分類し、これらに分類されない伏鍼のみ「伏鍼・異物」としてまとめています。また、伏鍼は「意図しない折鍼」が原因のものと、故意に折鍼して体内に残存させる「埋没鍼」に分けて分類しています。
・埋没鍼は、1976年に日本鍼灸師会が当時の厚生省に禁止通達を要望し、鍼灸医療安全ガイドラインにおいても厳禁となっています。

2012年から2015年の文献の総説(レビュー)では、折鍼による伏鍼が2文献2症例、詳細の記載がない伏鍼が1文献1症例報告されています。内訳は、右腹部内皮下組織内伏鍼1例、後腹膜空内伏鍼1例、側頭部の伏鍼1例です。
・折鍼によって体内に残存した鍼は結合組織に包まれその場にとどまる場合もありますが、迷入し脾臓や膀胱で結石化したり、脊髄内に迷入し脊髄損傷きたした例が報告されています。
・また、折鍼直後は無症状でも鍼が迷入し20・30年後に症状を発症した事例も報告されています。
・折鍼が患者の体内に残存した場合には、現在伏鍼による症状がなかったとしても迷入による神経損傷や臓器損傷のリスクと摘出手術のリスクを勘案する必要があります。摘出手術の適否を専門医に相談することが大切です。

・宮本俊和, 濱田淳, 山下仁ら. 鍼灸の安全性に関する和文献(5) 折鍼・埋没鍼. 全日鍼灸会誌. 2001;51(1):98-110.
・山下仁, 江川雅人, 楳田高士ら. 国内で発生した鍼灸有害事象に関する文献情報の更新(1998~損傷2002年)及び鍼治療における感染制御に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2004;54(1):55-64.
・山下仁, 楳田高士, 形井秀一ら. より安全な鍼灸臨床のためのアイデア(2) 有害事象報告論文(2003-2006)および指サック・グローブ装着に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2008;58(2):179-94.
・古瀬暢達, 山下仁, 増山祥子ら. 鍼灸安全性関連文献レビュー2007~2011年. 全日鍼灸会誌. 2013;63(2):100-14.
・古瀬暢達, 上原明仁, 菅原正秋, 山﨑寿也, 新原寿志, 山下仁. 鍼灸安全性関連文献レビュー20122015年. 全日鍼灸会誌. 2017;67(1):29-47.
・尾崎昭弘, 坂本歩, 鍼灸安全性委員会編. 鍼灸医療安全ガイドライン. 初版. 東京: 医歯薬出版; 2007.

 

灸による有害事象

・灸に関連する有害事象は、熱傷、灸痕の癌化、その他に分類されます。

・熱傷、潰瘍、化膿、水疱性類天疱瘡、灸痕の癌化(皮膚の悪性腫瘍)などが報告されています。
・水疱性類天疱瘡とは、掻痒を伴う浮腫性紅斑や滲出性紅斑と緊満性水疱からなる自己免疫性水疱症です。灸刺激が誘因となったと指摘されています。
・また、第3度熱傷に至るような強刺激の直接灸(焦灼灸など)でかなりの反復施灸を行った場合に、灸痕が癌化した症例が報告されています。
・灸痕が治りにくく、びらんを生じた場合は、施灸の刺激量や継続の是非を再考する必要があります。
・また、免疫力が低下した糖尿病患者やステロイドを大量に服用している患者、あるいは感覚障害(特に温度覚の障害)などへの透熱灸は避けるべきです。

2012年から2015年の文献の総説(レビュー)では、灸痕を発生母地とした有棘細胞癌1文献1症例報告されています。
・施術時の熱量、局所への長期かつ定期的な第3度熱傷に至るような強刺激の直接灸(焦灼灸など)による灸痕の癌化、易感染性患者の灸治療後の感染症発生リスクに注意する必要があります。

・山下仁, 江川雅人, 宮本俊和ら. 全日本鍼灸学会安全性委員会. 鍼灸の安全性に関する和文献(4) 灸に関する有害事象. 全日鍼灸会誌. 2000;50(4):713-8.
・山下仁, 江川雅人, 楳田高士ら. 国内で発生した鍼灸有害事象に関する文献情報の更新(1998~損傷2002年)及び鍼治療における感染制御に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2004;54(1):55-64.
・山下仁, 楳田高士, 形井秀一ら. より安全な鍼灸臨床のためのアイデア(2) 有害事象報告論文(2003-2006)および指サック・グローブ装着に関する議論. 全日鍼灸会誌. 2008;58(2):179-94.
・古瀬暢達, 山下仁, 増山祥子ら. 鍼灸安全性関連文献レビュー2007~2011年. 全日鍼灸会誌. 2013;63(2):100-14.
・古瀬暢達, 上原明仁, 菅原正秋, 山﨑寿也, 新原寿志, 山下仁. 鍼灸安全性関連文献レビュー20122015年. 全日鍼灸会誌. 2017;67(1):29-47.